障壁画完成披露展
瀬戸内海エコツーリズム協議会では、本プロジェクトの集大成として、たけはら町並み保存地区において障壁画完成披露展を開催いたしました。 3名のアーティストの方々が竹原の自然と文化に着想を得て制作して下さった作品は同地区の歴史的建造物において展示されました。歴史的建造物の中、新たな障壁画作品によって創出された「もてなしの空間」には、多くの方々においで戴くことができました。ご協力を賜りました連携先、協力先のみなさま、会場に来てくださいました竹原内外のみなさまに厚くお礼申し上げます。
日 程: 2024年2月28日(水)~3月14日(木)10:00~16:00
(期間中無休、入場は15:30まで)
会 場: たけはら町並み保存地区(〒725-0022 広島県竹原市本町3)
- 旧松阪家住宅/竹原市重要文化財 (有田氏屏風絵、松本氏屏風絵)
入場料300円( 18歳以下・市内の75歳以上無料 )
- 旧上吉井家住宅/期間中特別公開(大平氏襖絵)入場料無料
本展は2024年2月21日~26日にはプレ・オープンイベントとして開催されました。
竹原波涛図 Takehara Waves
有田大貴 Taiki Arita
屏風に水彩、アクリル、箔、酒の仕込み水、たけはらの塩、竹炭、樹脂、拾得物
2024年制作
この作品は、竹原市が面する瀬戸内海の「波」がテーマである。
竹原が海の恩恵によって製塩業や廻船業などで栄えた歴史を背景に、現代の竹原の海の姿や人間との関係を視覚と聴覚を通して探求した。
屏風絵は、竹原市の東から西までの瀬戸内海沿岸4ヶ所(忠海床浦、忠海長浜、竹原長的場、吉名町)で下絵を制作。日の出から日没までの時間を4つに分け、時間帯による海の変化を捉えた。画材には、竹原を象徴する素材(たけはらの塩、酒の仕込み水、竹炭)を取り入れ、絵筆には、竹筆や海岸で拾得した貝殻やプラスチック片などを用いた。
屏風下には、各浜辺で拾った貝殻、流木、シーグラス、海洋プラスチックなどを樹脂で硬化させ、自身の排出したゴミであるプラスチック容器で型取ったオブジェを設置した。また、浜辺の波打ち際を端から端まで素足で歩いた音、竹の葉による波の擬音を作品にあわせて流した。
有田大貴 Official Website
竹原神明図 Takehara Guardian Deities
大平由香理 Yukari Ohira
和紙に顔料、箔、竹原の塩
2024年制作
滞在制作が始まった2024年1月中旬頃に竹原市内の各地で始まった「神明祭(しんめいさい)」に想を得て本作を制作した。神明祭は竹原市内各地で旧正月ごろに催される火祭りで、五穀豊穣、家内安全、無病息災等を祈願するもの。竹や松の木の骨組みが色紙やワラで華やかに飾り付けられる「神明さん」は、集会や自治会、学校行事等で毎年作られている。地区や年によって装飾は異なり、それぞれがオリジナルの神明となっている。祭りは代々受け継がれ、神明は親しみをこめて「神明さん」と呼ばれることもしばしばである。突如町中に現れ、大きくそびえたち、手の込んだ神明が一瞬のうちに消え去ってしまう。神明さんはまるで土地を守る守り神のように感じられた。
神明に守られたこの町には、受け継がれてきた文化と景色がある。海山の自然、そこから塩づくりで栄えた歴史、町のどこからでも望むことができ町を象徴する建築の普明閣、歴史ある町並み等、様々な時間軸がまるで地層のように折り重なったような町を幽玄な時の流れを感じながら歩いてみてほしい、という願いを込め、本作を制作した。
大平由香理 Official Website
祝福の小径 The Blessing Road
松本 和子 Kazuko Matsumoto
板屏風に漆喰・顔料、ブオンフレスコ技法
2024年制作
日本ではあまり馴染みのない技法であるが、西洋では古くから「永遠の絵画」と呼ばれるフレスコ画により作品を制作した。フレスコ画は教会や城の壁に祈りや願いの対象が描かれてきたという画法である。
今回の滞在制作では、竹原の川や寺、竹林などが、当方の在住する京都の景色と繋がっているような感覚を覚えた。その中でも、旧松阪家住宅にある古い窓ガラスが印象に残った。摺りガラス越しに届く瀬戸内の明るい光を昔の塩作りに関わる人達も感じたのだろうか、と思いを馳せ、本作を制作した次第である。ガラスの模様の鳥の羽根や波のようにも見える部分が「祝福」を想起させること、かつて北前船が加茂川を通り、瀬戸内海を経て他の地域に塩を届けた「道」は自分の子の所へも繋がっているかもしれない、と想像を膨らませたことから、本作品を「祝福の小径」と名付けた。書画や儒学に造詣が深い当時の松阪家当主に、この一風変わったフレスコ画の屏風を見てもらうことができたなら、幸いである。
松本和子 Official Website
展示会場
旧松阪家住宅(竹原市重要文化財)
塩田の釜屋(塩水を煮詰める施設)の燃料となる薪・石炭問屋を営んだ商家の邸宅であり、波打つ大屋根や塗り込めた菱形格子が特徴的な建築。主屋の建築時期は文政期とされ、明治12年(1879年)に現在の姿に改築された。当時の当主である松阪昭二は、書画や儒学に親しんだ文化人であり、随所に施された中国風の装飾にその趣向が表されている。
(参考 竹原市教育委員会発酵「竹原案内」)
旧上吉井家住宅(期間中特別公開)
上吉井家(屋号「上米屋」)は、江戸時代に吉井家から分家して設立され、塩田経営や酒造業を行っていた。現在の建物は明治4年(1871年)に建てられ、明治7年に下市郵便取扱書となり、明治18年に初代竹原郵便局となった。
(参考 竹原市平成27年度資料)
竹原町並み保存地区・会場へのアクセス
藤井酒造酒蔵交流館、NIPPONIA HOTEL竹原製塩町レストラン棟においては、3人のアーティストの過去作品を展示させていただきました。
お問い合わせ
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